【翻訳】サイドプロジェクトから収益性のあるスタートアップに育てる方法(前編)
Feb 14, 2018
- 個人開発論
- 翻訳
この記事は、Pieter Levels(@levelsio)の「Turning side projects into profitable startups」という記事を、本人の許諾を得て翻訳・掲載しているものです。
※原文記事はこちらからご覧いただけます。
もし翻訳に間違いなど見つけた方は、info[at]notsobad.jpまでご連絡いただけるとうれしいです。
(訳注)元の記事と著者について
@levelsioってどんな人?
オランダ出身の「Serial Maker(連続していろんなプロダクトを作る人)」。 代表作は、世界中の都市のノマド向け情報をまとめた「Nomad List」など。
個人でユニークなサービスを開発・運営して収益を上げており、Product HuntのMaker of the Yearに複数回選出されています。 また今回の記事に出ているプロジェクトをきっかけに、New York Timesなど海外のメディアでもよく取り上げられている人です。
記事を読むと彼のこともよく分かりますが、とりあえず現時点では
くらいの理解で大丈夫かと。詳細は記事を読んでみてください。
この記事について
この記事は、著者の@levelsioが「自分の人生で一番重要」だったというプレゼンの内容を書き起こしたものです。
彼のこれまでやってきたプロダクト作りのノウハウが凝縮されていて、自分のWebサービスで収益化を目指している人にはものすごく参考になる内容だと思います。 ちょっと長いですが、これから何か作ろうという人、自分のサービスの収益化を目指している人は、ぜひ読んでみてください。
もし面白かったら、ぜひTwitterなどで本人に直接フィードバックするか、 もしくは質問・コメントなどいただければ、翻訳して本人にも伝えておきます。
それでは、ここからが記事の翻訳です。
サイドプロジェクトから収益性のあるスタートアップに育てる方法
@levels.io 2018年1月24日
私はちょうど、バリのCangguにあるDojoというコワーキングスペースで、「サイドプロジェクトから収益性のあるスタートアップに育てる方法」についてプレゼンしました。 録画してくれた@marcantoinefonに感謝します!
1年以上前にも同じような内容でプレゼンしましたが、その後にもたくさんの新しい学びを得たのです。 これについては、今度出版される書籍で詳しく説明します。
以下は、このプレゼンテーションのスライドとスクリプトです。
はじめに
私は過去4年間に、たくさんのスタートアップとサイドプロジェクトを作ってきました。 そのほとんどは「ブートストラップ」でやっています。 ブートストラップというのは、資金調達をせずにビジネスを構築しているということを意味します。
つまり、サンフランシスコに行って、大きくて太った年配の金持ち白人から、ベンチャーキャピタルの出資をもらったりしないということです。 代わりに、自分自身の力でビジネスを始めるのです。
これは、スタートアップを立ち上げる新しい方法として非常に魅力的です。 技術が安価になったおかげで、こんなやり方が可能になりました。 インターネット上で何か作ることは、いまやほぼ無料です。
そしてこれはエキサイティングでもあります。 なぜなら、ここにいる人はみんな、新しいモノを作りたいからです。
あなたはいま仕事を、もしかしたらリモート勤務の仕事をしているかもしれません。 でもきっと、自分自身の小さなプロジェクトを持ってみたいはずです。 そのプロジェクトでいくらかお金を稼いだり、あるいはしばらくしてそれが本当のスタートアップになったりするかもしれません。
だから、多分これはみなさんにとって関係のある話です。今日は来てくれて本当にありがとう。
自分の話
自分の話から始めたいと思います。 4年前、私はオランダにいて、ちょうど大学を卒業したところでした。
私はビジネスを学んだのですが、本当に退屈していました。 私の友人はみな企業での仕事を得ましたが、私は電子音楽に関するYouTubeチャンネルを開設していました。 そして月に2,000ドルから3,000ドルくらい稼いでいたのです。
大学を卒業したばかりの学生にとっては充分な大金で、私は幸せでした。 ただ音楽もその作業も好きでしたが、私は家で机に座ってYouTubeのビデオを作っているだけで、1日中ずっと家にいるのは本当に退屈でした。
そんなとき私の友人が言ったのです。「なんでノートPCを買って、そっちで作業しないんだ?そしたら少しは旅行したりもできるじゃないか」 私はその通りだと思い、すべてのモノを売り払いました。
たぶん、みなさんと似たような話だと思います。 あなたも自分の持ち物、借りていたものなどを処分して、アジアや南米や他のどこかに、ノートPCだけ持って旅をしたのでしょう。 私がそうでした。私もアジアのいろんなところを旅して回りました。
問題は、そのとき私のYouTubeチャンネルが破産しようとしていたことでした。
以前は売上が月$3,000や$2,000ありましたが、それが突然$900になり、$700になり、そして$500になってしまったのです。
fxxk!お金を稼がないと、この旅を続けることができないじゃないか。私は非常に落ち込みました。
それまではずっとノマド生活をしていたのですが、結局私は両親の家に戻ることにしました。
寒いオランダの冬をそこでじっと座って過ごし、ただ死にたいと思っていました。 人生が悪い方向に向かっていて、初めて本当に大きな不安とうつ病とパニック発作に襲われていたのです。 何とかする方法を見つけ出すことが必要でした。
私の父が、ずっとこう言っていたことを覚えています。 「もし何か落ち込むことがあれば、1㎥の砂を注文して、シャベルで砂を移動するんだ。ひとつの山から、もうひとつの山へ」 何でもいいから何かをすれば、落ち込んでいた気分が少し持ち直します。
オッケー父さん、やってみるよ。ただしデジタルな方法でね。
12 startups in 12 months
私は12ヶ月で12個のプロジェクトを行うことに決めて、それを「12 startups in 12 months」と名付けました。 まぁ実際にはスタートアップではなかったのですが、とにかくやることにしたのです。
そしてこの小さなプロジェクトが始まりました。 毎月1つのプロジェクトに集中して取り組むのです。 まだお金は稼いでいませんでしたが、ともかく。
音楽のプレイリスト作成サービス
最初の1つは、私と友人がいつもEメールでお互いに音楽を送りあっていたので、そのための小さなアプリを作りました。 お互いに送った音楽をプレイリストにして、後から見れるようにしてくれるのです。
まだチャットアプリがなかったころの話でした。今ではもう誰もEメールを使っていません。 このアプリでお金を稼ぐことはできませんでしたが、楽しいプロジェクトでした。
アニメーションGIFの印刷サービス
(2つ目のプロジェクトとして)アニメーションGIFを印刷して本にするサービスを作り、マレーシアでサプライヤーも確保しました。 アニメーションGIFを送ると、フリップブックとして印刷してくれるのです。
誰もがこのプロダクトを愛してくれましたが、利益は2〜3%くらいで、ほとんどお金にはなりませんでした。 税金を払うとマイナスだったんじゃないかと思います。
本当にどうしようもないプロジェクトでしたが、最高でした。
Go Fucking Do It
そして、次のプロダクトが初めて大きくバズることになりました。 「Go Fucking Do It」というもので、目標を入力して、期限を設定することができます。
たとえば、2018年1月までにタバコをやめたい、というように。 次に自分で金額を設定して、Stripeを使ってクレジットカード情報を入力します。
目標の期限が過ぎた日に、あなたの友人は「Pieterは本当にタバコをやめましたか?」というEメールを受け取ります。 もし答えがNoなら、あなたのクレジットカードに自分で決めた50ドルや100ドルの請求が送られ、そしてそのお金は私に行きます(笑)。
これがお金を稼ぐことができた最初のサービスでした。 YouTubeからの収入は、もう月200ドルまで落ちていました。 しかし突然このサービスによって月500ドル稼げるようになったので、合わせて月700ドルになり、もう一度何とか生きていけるようになったのです。 まだ大きなお金ではなかったけど、大丈夫。
そして、この頃からメディアが関わってくるようになりました。 友人がこんな風に、ちょっと面白い感じの写真を撮ってくれて、その効果もあったのかもしれません。
多くのメディアが「12 startups in 12 months」に関心を持ち、The Next WebやTech in Asiaなどが記事で取り上げてくれたのです。 突然、何千人もの人が私にメールを送り、Twitterでフォローしてくれるようになりました。
何かが動き始めていて、私はこのマーケティングチャンスを偶然ですが利用することができたのです。
Nomad List
一方で、引き続き新しいプロダクトも作り続けなければいけません。 そうして作ったものの中のひとつが、世界の各都市の情報をまとめたスプレッドシートでした。
私は、チェンマイ、バンコク、シンガポール、香港、東京など、様々な場所にいましたが、ネット環境が良くて、気温が26度くらいで温かく、生活費がそれほど高くない場所を探していました。 収入は月700ドルですからね。
そこで私はスプレッドシートを作ってTwitterに載せたのですが、まぁ正直にいうと最初は本当に編集権限を制限し忘れていて、みんなが勝手にシートの編集を始めてしまったのです。 Twitterでシェアしただけで世界中に広がり、何百人、何千人もの人々がデータを追加し始めました。
最終的に、75もの都市について、高速なネット環境やノマド向けのホットスポットなどの情報が集まったので、それをウェブサイトにしました。 リリースしてHacker Newsに投稿すると1位になり、どんどん利用者が増え続けました。 2014年8月くらいのことだったと思います。
2007年にTim Ferrisの「4-Hour Work Week」で最初のノマドブームが来たあと、2014年に第2のノマドブームが起きました。 検索トレンドのデータを見ると、これはNomad Listから始まっていると言えそうです。
そして私はこのNomad Listを、大量のデータが集まる巨大なウェブサイトに育てました。 現在1,250の都市について、25万件ものデータがあります。 すべてクラウドソーシングされており、また収益もあります。
ユーザーの月額課金で毎月15,000ドルから25,000ドルくらい入ってくるので、以前700ドルで生活していた頃から比べると、ずいぶん遠くまで来たようです。
もちろんここまで育てるには何年もかかりました。しかし、少なくともこれはうまくいったのです。
プロダクトをうまく軌道に乗せるために、私なりの哲学があります。 それはショットガンのようなものです。 多くのプロジェクトを発射し、どれがうまくいくかを見るのです。
私はNomad Listの成功から、Remote OKというサービスをブートストラップで立ち上げました。 これはリモート勤務の仕事情報に特化した求人サイトで、12月以来、この分野でNo.1のサイトとなっています。 毎月約100万人の訪問があり、月に約10,000ドルを稼いでいます。
Hoodmaps
また最近は、Hoodmapsというサービスを作りました。 これはいま私たちがいるCangguですね。 こうやってWikipediaのように、誰でもそのエリアについて持っているイメージをシェアできる地図サービスです。
HipsterやRichなどの区分に基づいてエリアを色分けできるので、自分がどのエリアに行けばいいかが分かるのです。
Cangguはノマドのメッカになっていますね。 DeusはHipstarのメッカ。 そして海はHotなサーファーの男女でいっぱいです!
スタートアップのプロセス
こうしたプロジェクトを作っていると、そこにはいつも共通のプロセスがありました。
最初にアイデアがある。もしくは問題からアイデアが生まれる。 サービスを作って、ローンチする。 それを成長させて、マネタイズする。 そして、もしサービスの運営に飽きてしまったら、ロボットでそれを自動化する。
今日は、こうしたすべてのプロセスについて話したいと思います。
そして大事なのは、ここにVCが一切関係していないことです。 ベンチャーキャピタルは関係なく、自己資金だけでやります。
(中編に続く)
中編は上記のプロセスの前半、「アイデア」「構築」「ローンチ」についてです。 特に海外にサービスを展開したい人にとっては、ローンチのところが非常に参考になると思います。