村上春樹「1973年のピンボール」内の出来事を時系列で整理し、 年表を作ってみるという誰得記事シリーズです。
Part.4は物語後半、「僕」がピンボールを探し始めてからの出来事を整理します。シリーズ全体の目次
- まえがき
- 完成版年表
- 年表の作成手順
- 序盤(Chapter0~7):プロローグ〜ラバー・ソウル
- 中盤(Chapter7~13):ラバー・ソウル〜ピンボール探し
- 後半(Chapter13~20):ピンボール探し〜講師からの連絡(★今回)
- 終盤(Chapter20~26):講師からの連絡〜エピローグ
- 回想の出来事たち
- わかったこと/わからなかったこと
- まとめ
後半(Chapter13~20):ピンボール探し〜講師からの連絡
次はピンボールが「僕」の心を捉えてから、スペイン語講師からの連絡を受け取るまでの、物語後半の時系列を整理してみます。
- [Chapter13] ピンボールが「僕」の心を捉える【10/21】
- [Chapter14] 鼠がジェイズ・バーで吐く
- [Chapter15] 「僕」が新宿のスペースシップにのめり込む【1970年冬】
- [Chapter16] 鼠が車の中から女の家の様子を思い出す
- [Chapter17] 「僕」がスペイン語の講師と会う
- [Chapter18] スペイン語講師からの連絡を待つ1週間
- [Chapter19] 鼠がジェイズ・バーに3日通うが、別れを切り出せない
- [Chapter19] 鼠が閉店後のジェイズ・バーでジェイと話す
- [Chapter20] 「僕」が大学講師から連絡を受ける【11/7(※次項で検討)】
鼠サイド
まずは鼠サイドの出来事を中心に整理してみます。
Chapter14では、夏の盛りを取り戻したように久々に混み合うジェイズ・バーで、鼠が飲みすぎて吐いています。
週の半ばに鼠はウィスキーを一人で飲みながら、全ての思考をしばらく凍結させることに決めた。(中略)これで週の後半を乗り切れるだろうという見通しをつけて眠った。しかし目が覚めたときには何もかもがもとどおりだった。
(p.116)
という描写から、この時点では週の後半にいると思われます。
また、Chapter14で一週間ばかり天候も崩れがちだったという描写がありますが、次のChapter16は以下の文章で始まります。
何日も降り続いた雨は金曜の夕方になって突然上がった。
(p.122)
このことから、Chapter14が木曜、Chapter15が翌日の金曜と考えるときれいにつながります。
10/21以降の木金だと、「10/25,26」or「11/1,2」となりますが、このあとのChapter17で「僕」がスペイン語講師と会うのがまだ10月のため、「10/25,26」で考えるとうまくいきそうです。
※Chapter17では直接日にちの記述はありませんが、講師と会った後のChapter18で以下の記述があるため、まだ十月であることが確認できます。
十月の雨は素敵だった。
(p.137)
次のChapter19で、鼠が三日ジェイズ・バーに通ったあと、月曜の深夜に閉店後のバーでジェイと話す出来事が続きます。
さらにその後のChapter20が11/7の出来事となるので、11/2(金)~4(日)にバーに通い、11/5(月)にジェイと話した、と考えると時系列がきれいに整理できそうです。
「僕」サイド
後半「僕」サイドの主要な出来事は、スペイン語講師との出会いです。
絞込のヒントとしてはこんな感じ。
- 講師から連絡を受ける「11/7」から逆算して約1週間前
- 前後の章の時系列から、10/27〜11/1までの間
- この後のChapter18で「十月の雨」という描写があるので、10月30日以前
ここから、「10/28~30」程度に絞れそうです。
スペイン語講師との出来事は厳密には2日にまたがっていて、前日の夜7時に電話して、翌日の夕方に会っています。
スペイン語講師と会ったあとの時系列で「十月の雨」が降っているので、前日の電話が「10/28」、実際に会ったのが「10/29」、雨が降ったのが「10/30」or「10/31」と考えるとぎりぎり収まりがつきそうです。
1日遅く考えることも可能ですが、会った直後に雨が降るのもChapter18の描写からやや不自然なので、ここでは「10/29」説を採用します。
またChapter18の連絡を待つ1週間の描写で、
日曜日には僕たちは一時間ばかりかけて植物園まで歩き、くぬぎ林の中で椎茸とほうれん草のサンドウィッチを食べた。
(p.137)
という記述がありますが、時系列から考えてこれは「11/4(日)」の出来事と考えられそうです。
まとめ
ここまでの内容を整理してみるとこんな感じ。
- [Chapter13] ピンボールが「僕」の心を捉える【10/21】
- [Chapter14] 鼠がジェイズ・バーで吐く【10/25】
- [Chapter15] 「僕」が新宿のスペースシップにのめり込む【1970年冬】
- [Chapter16] 鼠が車の中から女の家の様子を思い出す【10/26】
- [Chapter17] 「僕」がスペイン語の講師と会う【10/30】
- [Chapter18] スペイン語講師からの連絡を待つ1週間【10/31~11/6】
- [Chapter18] 双子と植物園に行く【11/4】
- [Chapter19] 鼠がジェイズ・バーに3日通うが、別れを切り出せない【11/2~4】
- [Chapter19] 鼠が閉店後のジェイズ・バーでジェイと話す【11/5】
- [Chapter20] 「僕」が大学講師から連絡を受ける【11/7(※次項で検討)】
次回予告
次回Part.5はついに物語終盤です。
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